肺癌
Lung cancer
肺の構造
右肺は3つの肺葉で、上葉、中葉、下葉と分かれます。
左肺は2つの肺葉で、上葉、下葉と分かれます。
癌病巣の切除+リンパ節廓清
基本的な手術は、癌のある肺葉を切除することと、癌細胞の通り道であリンパ節を切除(リンパ節廓清)することです。
ただ、肺癌の悪性度が低い場合や、肺機能が悪い場合は、区域切除や部分切除といった、肺の切除量を少なくする縮小手術を行うことがあります。
手術の実際
①開胸手術(8cm-15cm程度の切開)
胸腔鏡をへいようして、開胸し(7.5cm~18cm程度の切開)、直接術野を見ながら手術を行います。
②胸腔鏡手術(肋骨を広げない手術)(鏡視下手術)
肺癌の大きさや肺・胸腔内の状態(肺気腫や間質性肺炎、胸腔内の癒着の有無など)で開胸手術行う場合や胸腔鏡手術で行う場合があります。
2021年12月31日時点で、悪性腫瘍(原発性肺癌、転移性肺癌)に対する単孔式胸腔鏡手術は164例に行い、原発性肺癌151例(肺葉切除95例、区域切除25例、部分切除31例)、転移性肺癌(肺葉切除1例、区域切除1例、部分切除11例)でした。
③ダヴィンチ手術(ロボット支援下手術)
2022年8月より開始予定
側胸部に1cm前後の創を4~5か所作成し行う手術
(摘出肺を取り出すために1か所の創を3~4cmに延長する)
開胸手術 | 胸腔鏡手術 | ダヴィンチ手術 | ||
単孔式 | 多孔式 | |||
創 | 8cm-20cm前後 |
4cm前後の傷が1か所 | 4cm前後の傷が1か所 | 1cm前後の傷が5か所 |
2cm前後の傷が1-2か所 | 取り出す際に3-4cmに 切開延長 |
|||
創痛 | 強い | 弱い | 弱い | 弱い |
器具の操作性 | 容易 | 比較的容易 | 比較的容易 | 容易 |
視野 | 直接見る | モニター越しに見る | モニター越しに見る | モニター越しに見る |
拡大して見えない (3D立体視) |
拡大して見える (2D平面視) |
拡大して見える (2D平面視) |
かなり拡大して見える (3D立体視) |
上表のように、各アプローチにおけるメリット・デメリットがあります。
肺癌の悪性度・術式を検討し最適なアプローチで手術を行うよう心がけております。
2021年1月~12月末まで原発性肺癌に対する手術は118例でした。
肺葉切除 | 区域切除 | 部分切除 | 計(例) | |
胸腔鏡手術 | 49 | 15 | 34 | 98 (83.1%) |
▶ 単孔式 | 48 | 15 | 24 | 87 (73.7%) |
▶ 多孔式 | 1 | 0 | 10 | 11 (9.3%) |
開胸(胸腔鏡補助下) 手術 |
17 | 2 | 0 | 20 (16.9%) |
合計(例) | 66 (55.9%) |
17 (14.4%) |
35 (29.7%) |
118 |
原発性肺癌手術118例中、胸腔鏡手術は98例(83.1%)、単孔式手術は87例(73.7%)でした。
単孔式手術は胸腔鏡手術98例中、87例(88.8%)でした。
胸腔鏡手術 | 胸腔鏡手術 (単孔式) |
開胸(胸腔鏡補助下) 手術 |
全手術 | |
日数 |
2~15 | 2~15 | 2~15 | 2~10 |
平均値 | 2.5 | 2.5 | 3.1 | 2.6 |
中央値 | 2 | 2 | 3 | 2 |
胸腔鏡手術 | 胸腔鏡手術 (単孔式) |
開胸(胸腔鏡補助下) 手術 |
全手術 | |
日数 |
4~29 | 4~29 | 7~19 | 4~29 |
平均値 | 7.8 | 7.8 | 9.5 | 8.1 |
中央値 | 7 | 7 | 8 | 7 |
気胸
Pneumothorax
肺にできた風船(ブラ・ブレブ)が破れて、空気が胸腔内に漏れて肺がしぼんでしまう疾患です。若い(20歳以下)やせ型の男性に起こることが多いですが(原発性(自然)気胸)、肺気腫などに合併する高齢者に発症する気胸(続発性気胸)もあります。続発性気胸の方は、もともと呼吸機能の低下が見られますので、術後リハビリを行ってから退院される場合もあり、入院期間は延長することがあります。また稀ですが、月経随伴性気胸など女性特有の気胸もあります。
気胸になった場合の治療は、しぼんだ肺を膨らませるために胸腔内にチューブを挿入し、溜まった空気を取り除きます(胸腔ドレナージ)。空気漏れが止まらない場合や気胸を繰り返す場合は手術を行います。手術は胸腔鏡手術が(上述の単孔式や多孔式)基本でブラ・ブレブを切除もしくは焼灼し、シートで補強します。
縦隔腫瘍
Mediastinal tumor
腫瘍の大きさや発生部位により創の切開が異なります。
正中にある場合や近接臓器に浸潤が疑われる場合は、胸骨正中切開(胸の真中を切開し胸骨を縦切開する)で腫瘍切除を行っています。腫瘍が左右どちらかに偏在している場合は胸腔鏡手術(上述の単孔式や多孔式)で腫瘍切除を行います。また、5cm以下で周囲への浸潤がない腫瘍に対しては、胸骨を切開しない、剣状突起下二孔式胸腔鏡手術(創部は心窩部と胸部の2か所)も行っています。
呼吸器外科手術件数(過去5年間) | |||||
year | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
悪性腫瘍 | 218 | 130 | 127 | 116 | 126 |
原発性肺癌 | 117 | 115 | 109 | 118 |
|
転移性肺癌 | 13 | 12 | 7 | 8 | |
良性腫瘍 | 10 | 9 | 2 | 4 | 1 |
縦隔腫瘍 | 3 | 3 | |||
気胸 | 18 | 19 | 19 | 17 | 7 |
原発性(自然)気胸 | 5 | 3 | |||
続発性気胸 | 12 | 4 | |||
合計 | 178 | 172 | 167 | 152 | 158 |
2021年その他手術内訳
気管切開:10、炎症:4、術後肺瘻:3、真菌症:2、分画症:1、肺内リンパ節:1